豚食文化を未来へ残そう!雌雄産み分け技術が実現させる生産効率化と環境配慮
雌雄産み分けによる高効率な精密畜産技術の開発/白川 晃久(ルラビオ株式会社)
プレゼンテーション概要
ルラビオ株式会社代表取締役・白川晃久さんが発表したのは、豚の雌雄産み分けによる高効率な畜産技術の開発です。
食肉の生産の課題は、環境負荷の増大やアニマルウェルフェアの問題、飼料高騰などがありますが、白川さんは、雌雄産み分け技術によって課題解決に貢献できると話します。これまで牛の産み分けは実用化されすでに利用が進んでいるものの、同じ技術を豚に応用することは非常に難しいとのこと。そこで同社は試薬によってX精子とY精子を分離する手法を用いて雌雄産み分け技術を開発しました。
肉豚の生産は通常、生産性の高い性質の母豚を生み出し、脂ののりやすい性質の肉豚を掛け合わせて行われます。各工程への産み分け導入を目指しますが、まず母豚生産の効率を高めることが開発ポートフォリオの第一段階と白川さん。母豚生産効率40%アップを目標に現在実証試験中だそう。第二段階は肉豚の100%オス生産、第三段階は100%メス生産を目指します。オスは成長が早く飼料が少なく済むこと、メスは去勢が不要のためアニマルウェルフェアの観点からニーズがあるとしました。
想定する顧客は種豚会社および養豚会社で、世界市場は3700億円と推計。そのうち日本はわずか1.5%とのことで白川さんは、日本で事業を確立し、ヨーロッパ、アメリカへの進出を計画中と話し、すでに世界の上位数社とはコンタクトを取っているといいます。財務計画としては2025年に黒字転換を実現。初期は種豚向け事業をしっかり立ち上げ、中期目標として肉豚用技術開発、海外企業とのタイアップを進め、その後さらに海外展開を拡大する計画です。
事業による波及効果について次のように話しました。豚の雌雄産み分けによって生産の高効率化と飼料量の削減が実現し、企業の利益が増えます。一方社会や環境に目を向ければ、リソースを少なく肉を生産できることで環境負荷が低減し、豚のゲップによる温室効果ガスも減少、さらに地域の食文化の継承につながります。そして「100年後もおいしいとんかつを食べられる社会を残しましょう」と結びました。
審査員講評
審査員の一般社団法人AgVenture Lab代表理事・荻野浩輝さんは「ニワトリや牛の産み分けを手がけるスタートアップは聞いたことがあるが豚は初めて。私も100年後にとんかつ文化を残したい、ぜひ実現してください」と激励。株式会社シグマクシス常務執行役員・田中宏隆さんは「唯一無二であり、世界に発信できる技術であることがよく分かりました」と講評しました。
その他のプレゼンテーション
-
「棚田ポニックス」(循環型施設園芸) 低投資、高収益、脱炭素型食料供給システムの実現/遠崎 英史(株式会社プラントフォーム)
-
プラットフォーム微生物「DSE」によりあらゆる環境で植物の生育を実現する/風岡 俊希(株式会社エンドファイト)
-
もったいない文化×センサー技術×AIによる食品ロス問題解決/南 俊輔 (グロービス経営大学院)
-
未利用食品を新たな食品へと生まれ変わらせる“粉末技術”/中村 慎之祐 (株式会社グリーンエース)
-
ハウスの可視化を加速するSustagram Farm/山口 孝司( AGRIST株式会社)
-
“儲かる有機転換”を実現する高機能バイオ炭と、食べることで環境貢献できるブランド野菜
-
有機性廃棄物処理とタンパク源確保を同時解決!速い・きれい・おいしいイエバエで「養虫産業」を創出
-
「栄養2.0」の世界へようこそ 革新的な食の個別化サービス「AI食」
-
日本酒をおしゃれに手軽に持ち運ぶ!一合缶®︎に入った日本酒ブランド誕生