“儲かる有機転換”を実現する高機能バイオ炭と、食べることで環境貢献できるブランド野菜
地球環境にやさしい宙(そら)ベジの普及/木村 俊介(株式会社TOWING)
プレゼンテーション概要
株式会社TOWING COOの木村俊介さんが発表したのは、農家の有機栽培を支援する高機能バイオ炭*と、それを活用して栽培する作物ブランド「宙ベジ」の普及についてです。木村さんが挙げた現在の日本の農業の課題は、一つは化成肥料の原料の枯渇と急激な価格高騰。もう一つは温室効果ガス排出量が大変多いことです。脱炭素に向けて有機肥料の活用は喫緊の課題ですが、実際に有機転換は容易ではないと木村さんはいいます。有機転換すると土づくり期間の当初5年は収量が約3分の2に減り、高く販売せざるを得ないのが実情です。
解決手段として提案するのが、独自の微生物バイオ技術で生産する高機能バイオ炭。これを農地に活用することで収量を向上しながら脱炭素を実現し、有機転換をサポートできるといいます。さらにできた作物の販売を支援するため、食べることで環境貢献できる作物として「宙ベジ」と名前を付けブランディングしました。
高機能バイオ炭は、もみ殻・畜ふん等を炭に代えたバイオ炭資源に、土壌由来微生物と有機肥料を組み合わせたもの。これを使うと、有機農家が5年かけて作り上げる土壌環境をわずか1ヵ月で作ることができ、実際に収量も向上する実績を上げました。また埋めたバイオ炭は炭のまま残るため二酸化炭素の削減につながります。生産性が上がるため農家は高く販売せずとも収益が向上し、作物自体には高い環境貢献度という付加価値が付きます。これは売り手にも買い手にも大きなメリットであり、テスト販売でも売れ行きは好調とのこと。
競合としては、すでに市場に出回っている一般のバイオ炭を活用した野菜ですが、同社の高機能バイオ炭は収量向上効果が高く、農家にとって大きなメリットがあるとしました。「宙ベジ」として独自の販路を提供できる点、格段に高い脱炭素性能にも優位性があります。
ロードマップでは、自社農園のある東海地方を皮切りに2023年からは協力農家を増やしながら関東、全国へ展開し、2026年に世界展開を見込みます。木村さんは「我々のミッションは『次世代の緑の革命を、すべての食卓にサステナブルを』。これからも次世代の農業エコシステムの創出に向けて努力してまいります」と結びました。
審査員講評
審査員のアグリビジネス投資育成株式会社取締役代表執行役・松本恭幸さんは「生産現場では有機栽培をいかに始めるかが大きな課題。大変有効な手段の一つとなり得る」と講評。株式会社ユーグレナ代表取締役社長・出雲充さんは「すばらしい提案。木村さんのいる場所は何をしても成功すると思うのでぜひ頑張ってほしい」。審査の結果最優秀賞に選ばれ、授賞式では審査員を代表して松本さんが「新規性、事業性、すべての視点ですばらしく、満場一致の結果。有機農法への背中を押す具体的な一歩であり、脱炭素戦略を農業の現場から発信してほしい」と述べました。
(補足)高機能バイオ炭*
TOWING独自のバイオ炭の前処理技術、微生物培養等に係る技術を、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構が開発した技術と融合し、実用化しました。
受賞者インタビュー
その他のプレゼンテーション
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