アップサイクルされた「粉」が、日本の、世界のフードロスを救う!?
未利用食品を新たな食品へと生まれ変わらせる“粉末技術”/中村 慎之祐(株式会社グリーンエース)
プレゼンテーション概要
中村さんがプレゼンテーションするのは、未利用野菜の粉末化技術を利用した新たな食料システムです。
中村さんは、東京農工大学で約6年間この農産物の粉末化の研究に取り組み、色や香り、そして栄養を残したまま、農産物を粉にする技術の開発に成功しました。この技術では、熱だけではなく風の力も組み合わせることによって、従来よりも圧倒的に短時間で農産物を乾燥粉末化することが可能になりました。
さらに、従来の技術と比べて、およそ数倍から数百倍高い栄養を保持することが明らかに。中村さんは「この技術を使えば、色や形、大きさなど全く問わず、全ての農産物を長期保存ができ、使いやすい形に変えていくことができるんです」と語ります。
中村さんは、この粉末を使って自社で商品を開発販売してきましたが、今回はこの技術を使って新しい食料システムを作る取り組みに挑戦しています。
食品の有効活用を目指すアップサイクルの取り組みが注目されていますが、商品開発にはさまざまな壁があるそうです。すぐに傷んでしまう食べ物をどうやって保存加工するのか、どんな商品に生まれ変わらせるのか、そして長いサプライチェーンをどうやって管理するのか…。それらを解決するのが、中村さんたちが提供する技術。「主に小売企業さま、外食企業さまを対象として、契約農家と契約農家のもとで発生する規格外野菜やプロセスセンターで発生するフードロスを我々の工場で粉末化します。そして、最終商品まで生まれ変わらせて、もう一度小売さま外食さまのもとへお届けするというシステムです」と、中村さん。
アップサイクル商品としては、ふりかけ、スープ、ドレッシング、パスタにパン…と、さまざまな展開が可能。顧客のニーズに応えながら、商品開発ができます。現在中村さんは、フードロスの解決を志している大手小売り、卸売りと共同でアップサイクル商品の開発を始めているそう。そして、2024年内には、一般のスーパーマーケットでもこれらのアップサイクル商品が並ぶ予定だと話しました。
中村さんは「私たちは、このとっておきの仕組みを小売り、外食業界へと広げていきます。粉末を販売、もしくはアップサイクル商品を販売することでマネタイズし、事業を成長させます。また、この技術をもっと磨いていくこと、用途開発の技術を磨くことで、メーカーさまを含む食品業界全体のフードロス削減に挑みます」と締めくくりました。
審査員講評
味の素の柏原正樹さんは「食品には賞味期限もあるし、輸送するときに包装しなくてはいけないので、環境負荷はどうしてもある。その点、粉末はとても素晴らしいソリューションだと思いました。今回はアップサイクルっていう形で利用されましたが、通常の原料を粉末化するだけでも環境にいい。そういったところに活用の可能性を見出しました」と高く評価。審査の結果、中村さんのプレゼンテーションは「審査員特別賞」に選出されました。表彰式で、明治ホールディングスの長田昌士さんは「フードロスを考えたときに、こういうことができるといいなというのは、技術者として思っていました。いろいろ課題はあると思いますが、ぜひこういう考え方を広めていただければ」と話していました。
受賞者インタビュー
その他のプレゼンテーション
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