微生物の力で、劣化土壌などの極限環境が「豊かな土壌」に!
プラットフォーム微生物「DSE」によりあらゆる環境で植物の生育を実現する/風岡 俊希(株式会社エンドファイト)
プレゼンテーション概要
風岡さんが提案したのは、プラットフォーム微生物「DSE」を活用した農業です。
プラットフォーム微生物技術の実用化で、通常植物が生育することができないような極限環境でも植物を良好に生育させることができるようになります。世界の食糧危機解消や土壌改良などの包括的な環境課題に寄与することが期待されているのです。
これまでの過度な農薬や化学肥料の使用、農地開拓によって、世界規模で土壌劣化が大きな課題となっており、国連からも警鐘が鳴らされていることを風岡さんはデータで表示。2024年現在、世界において33%以上の土壌が劣化しており、2050年には90%以上の土壌が劣化するということが予測されているのだそうです。
こういった喫緊の課題に対して提案するのが、世界の緑化を実現するプラットフォーム微生物「Dark-septate endophyte」の実用化です。風岡さんは「この微生物は貧栄養環境の森林土壌から特定選抜したもので、植物の根に摂取させることで通常吸収できない栄養素の吸収促進、環境ストレス耐性の向上や病害耐性の向上、加えて季節気候条件問わずに花を咲かせて実をつける効果をもたらします」と、そのメリットについて話しました。
さらに、土壌のほかの有用微生物を巻き込んでさらに高い効果、植物に還元させることも可能なプラットフォーム的な役割も担っているそうで、「ゆくゆくは全ての植物をあらゆる極限環境で生育可能にする微生物ライブラリーの開発を目指しています」とのこと。
用途としても非常に汎用的で、有機再生農業、都市型農園植物工場、森林土壌再生といったさまざまな分野で、国内海外での事業実施が進められています。使い方はシンプルで、「弊社が既に持っている菌株を農家や事業者、環境の観点から必要なものを選択して選んでいただき、それを培養土と混ぜ合わせて植物を育てていただきます。植物の根に微生物が定着した高機能な苗ができ上がり、環境ストレス耐性が向上していたり栄養吸収促進できたり、気候問わずに花芽形成できたり、CO2排出量を抑制したりと、さまざまな効果が付与されていて、通常難しい条件でも植物が生育できるようになります」と、風岡さん。
基本全ての植物に適用可能な技術になっているそうで、風岡さんは「農業経営の観点からは、収穫量を増加、季節問わずに栽培できることによる収穫機会の増加、有機ブランドによる高単価が実現できます。費用コストも削減でき、圃場も厳格に管理する必要がなくなるので管理コストも大きく減らすことが可能です」と話し、審査員の関心を大きく引きました。
審査員講評
味の素の柏原正樹さんは、「微生物の力を使って農業を高度化していくことは、間違いなくニーズがあります。収量を上げる、あるいは作れないところで作っていくっていうことにおいて、環境への貢献や食糧問題そのものの解決にもなりますね」と評価しました。UnlockSの田中宏隆さんは「すごく可能性を感じました。世界中で食農の拠点ができてきているので、そういったところを活用してのアプローチもあるかもしれませんね」と話しました。審査の結果、風岡さんはビジネス部門で最優秀賞を獲得。アグリビジネス投資育成株式会社の松本恭幸さんは「実は満場一致でほとんど議論がなかったです。日本だけでなく世界の農業、環境問題に大変大きな貢献をすることでしょう」と絶賛していました。
受賞者インタビュー
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