ご飯で包むけど「おにぎり」じゃない!?子どもたちに安くて栄養のあるおやつを
シン・ゴハン『まあるいご飯のおやつ』/小南 藤枝(衣笠屋)
プレゼンテーション概要
愛知県豊橋市・衣笠屋の小南藤枝さんの発表は、米を活用した安くて栄養バランスの優れたおやつ「まあるいご飯のおやつ」です。
小南さんが解決を目指す社会課題は、米の消費減少と子どもの貧困です。米の消費は半世紀で半分以下に減少し、それに伴って作付面積も減りました。また7人に1人の子どもが相対的貧困状態にあると言われます。小南さんは「貧困状態の子どもは十分に食べられないために栄養不良を招き、それによって生きる活力をそがれる。私自身も栄養不良になった経験があり、なんとか子どもたちの役に立ちたい」と考えました。
二つの課題を同時に解決しようと開発したのが、米を使った安くて栄養のある食品「まあるいご飯のおやつ」です。「菓子パンやおにぎりと同等の価格で、これらより栄養価の高いものができました」と小南さん。針金を使ってご飯を薄く丸く成型し、具材を挟みながらミルフィーユのように重ねて全体を薄い外皮で包んで製造します。この成型法は特許を取得しました。
新規性は前述の成型法の他、冷凍しても味が変わらず長期保存できることと、具材は残ったおかずやカレーなど何でも使えてフードロスを削減できること。試食のアンケートでは若い世代からも「おいしい」と好評だったといいます。
競合商品はコンビニ等で購入できるおにぎりやサンドイッチを想定。これらと比較して特に優位性が高いと考えているのは、一つでタンパク質も野菜も摂取でき、栄養バランスに秀でる点。さらに、具材を選ばず多様な組み合わせが可能であること、金型次第でどのような形状も作れるため、子どもが喜ぶ形に仕上げられることです。
事業化のロードマップとして、地元愛知県から中部地方、全国へと販売を拡大し、3年目には2000万個の売り上げを計画。これにより米の消費量は740トン増加し、「子どもたちに豊かな国土を残すことができる」としています。最後に「まあるいご飯のおやつは、おいしい、身体に優しい、子どもや地球の未来に優しい食品。“sushi”や“rice ball”のように世界の米食を変えていきます」とまとめました。
審査員講評
審査員の株式会社シグマクス常務執行役員・田中宏隆さんは「まず私が食べたいという感動と、捉えた課題がテーマとして複層的に回っていて将来性を感じた。災害食としても非常に可能性がある」と講評しました。株式会社セブン&アイ・ホールディングス執行役員・釣流まゆみさんも「コンビニのおにぎりはどうしても栄養が偏る中で、完全食を作ることができれば災害食としての実現可能性が高まる。頑張ってほしいです」とエールを送りました。審査の結果、小南さんの提案は特別賞を受賞。選定理由として審査員を代表し、田中さんが「多用途でありさまざまな課題を一気に解決できる。おやつを超えて、とんでもないものに変わるのではないかと期待している」と述べました。
受賞者インタビュー
その他のプレゼンテーション
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